現代のビジネスにおいて、「デザイン」は見た目を整える作業ではありません。
ユーザー体験を設計し、課題を解決し、事業を前に進めるための重要な思考プロセスです。
その中心にあるのが「デザイン思考」。デザイン思考は、単なるデザイナーやクリエイターだけのものではありません。企画、営業、マーケティング、開発など、すべてのビジネスパーソンに求められる共通スキルです。
いま、大手企業はもちろん、中小企業でもデザイン思考の導入が広がりつつあります。なぜなら変化の激しい時代に必要なのは、現場で実行できる「課題解決力」と「共感力」だから。
本記事では、デザイン思考の基本から、ビジネスでどのように活用できるのか、そしてIMAKEがご提案する研修内容までを紹介します。
目次
「デザイン」に対する誤解
「デザイン」と聞くと、多くの方は見た目の美しさや色・形を整える作業をイメージするかもしれません。「デザインはセンスのある人だけの仕事」「自分には関係のない領域」と考えてしまう人も少なくないでしょう。
しかし、現代のビジネスにおけるデザインは、“見た目を整えるだけ”ではありません。 デザインとは、ユーザー体験を設計し、課題解決や売上向上に直結する戦略的な要素です。
そう定義できる理由は、DXの考え方にあります。
DX時代における「デザイン」とは
現在、経済産業省をはじめとした政府機関や多くの企業が推進している「DX(デジタルトランスフォーメーション)」において、「DX推進スキル標準(DSS)」では、業務改革・価値創造を担う人材に必要なスキルとして、ユーザー視点でのサービス設計や、課題解決型の思考力が明確に位置づけられています。

特に注目すべきは、同標準において「デザイナー」が次のように定義されている点です。
“ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材”
このように、デザイナーとは単に見た目を整える人ではなく、ビジネス全体を俯瞰しながら、顧客視点で製品やサービスの価値を設計していく役割を担う存在として定義をされています。
この内容は、デザインのセンスのあるデザイナーに限った話ではなく、企画・開発・営業・マーケティングなど、あらゆるDX時代の部門に必要なスキルであり、デザインのもっと本質的な目的は、“課題を構造的に捉えて、より良い解決方法を導き出す力”ということです。そして、その代表的な手法が「デザイン思考」になります。
デザイン思考とは
デザイン思考とは、2004年頃にデザイン・コンサルティング会社のIDEO社で用いられた標語が元になっていて、問題解決やイノベーションを促進するためのアプローチや哲学を指します。
デザイン思考は人間を相手にしている業種であれば、いずれも必要なものです。なぜなら、デザイン思考はイノベーションを生み出す人間中心設計(HCD)のアプローチだから。
デザイン思考の体系的な要素は以下の通りです。
・共感して感受する ・問題を理解し目標設定をする ・アイデアを元に議論する ・プロトタイプで具現化する ・フィードバックから解決策を洗練する
ちなみに、アメリカの認知工学者のドナルド・ノーマン氏が2014年に「誰のためのデザイン?」で人間中心設計(HCD)のアプローチを提示しています。
HCDとは哲学と進め方であり、インダストリアルデザイン・インタラクションデザイン・エクスペリエンスデザイン、3つのデザイン分野が注目する領域である。 HCD哲学と進め方は、製品やサービスが何であれ、主な注力点がどこであれ、デザインプロセスに人間のニーズについての深い考慮と検討を付け加えるものである。
つまり、人間中心設計(HCD)やデザイン思考の考え方はターゲットになるユーザーのニーズに寄与するため、課題解決できるようなサービスを提供する以上、企業側が目標までたどり着けるプロセスを考えられるようになることはすべからく必要です。
現に、デザイン思考の考え方は、日立や富士フィルムなど国内大手企業、海外企業ではAppleやGoogleにも取り入れ、近年では大手に限らず中小企業の導入も増えてきています。
一般企業がデザイン思考を学ぶ理由
ここまでお伝えした内容では、「そんな凄そうなもの中小企業の私たちにはいらないよ」と思う方もいるかと思いますが、中小企業だからこそ、デザイン思考を学ぶ必要性があると感じています。
なぜ、デザイン思考を学ぶ必要があるのでしょうか?メリットは主に3つです。
1. 課題発見力と提案力が高まる
デザインの本質は「相手を思いやること」です。ユーザーの立場になって課題を発見し、より良い体験を設計する。これらのプロセスを学ぶことで、業務やサービスに対する視野が広がり、社内外への提案力も格段に高まります。
2. チームの共通言語が生まれる
「なんかいい感じにして」「もっとパッと見てわかるように」といった曖昧なコミュニケーションは、プロジェクトのスピードと質(クオリティ)を落としてしまいます。デザインの基本知識があることで、チーム内での会話がスムーズになり、意思決定の質が高まります。
3. 顧客目線での判断ができる
デザイン思考を学ぶ研修では”ユーザー視点”を重視するトレーニングが行われます。これにより、営業や企画、経営の現場でも「自分たちの都合」ではなく「顧客にとってどうか」という観点で意思決定ができるようになります。
デザイン思考の5つのプロセス
「デザイン思考」は以下のような5つのプロセスを通じて、ユーザーが抱えている本質的な課題を捉え、その課題解決策を導き出していきます。
- 共感(Empathize)
- 問題定義(Define)
- アイデア創出(Ideate)
- プロトタイプ(Prototype)
- テスト(Test)
これらを繰り返しながら、発散(アイデアを広げる)と収束(絞り込む)を交互に行うのがデザイン思考の特徴です。「発散」のプロセスでは、自由な発想力を生かしてアイデアや情報を広げることを目指し、「収束」のプロセスではその中から適切なものを選択し、実現に近づけることを目指します。
デザイン思考は、UX(ユーザーエクスペリエンス)の分野においても非常に重視されています。 その代表的なモデルが「ダブルダイヤモンドモデル」です。
ダブルダイヤモンドモデルとは?
「ダブルダイヤモンドモデル」は、2005年に英国デザイン協議会で初めて導入された「発散」と「収束」の2つのプロセスを含む、課題解決のためのプロセスモデルです。
これはデザイン思考の実践に非常に適しており、以下の4つのステージで構成されます。
- 探索(Discover):問題の本質を発見するために情報を広く集める(発散)
- 定義(Define):課題を明確にし、何に取り組むかを決定する(収束)
- 展開(Develop):さまざまな解決策を模索・試作する(再び発散)
- 提供(Deliver):有効な解決策を選び、実行する(再び収束)

このように、2つのダイヤモンド=「発散と収束の2つのフェーズ」を通じて、問題の発見から解決までを導く手法です。これを理解することで、「デザイン思考」を習得できるようになります。
ノンデザイナーの方にも、組織の中で自らのアイデアを形にし、共感を呼ぶための重要なスキルになるのです。
実は多くの企業がデザイン思考の研修を始めています
実際、多くのビジネスパーソンが、既にデザイン思考を学び始めています。特に、開発・マーケティング・営業など部門横断で研修を行うことで、共通言語としてのデザイン思考が機能しはじめ、チームワークや意思決定の質に大きな変化が出ています。
IMAKEのデザイン思考研修
株式会社IMAKEでは、これまで
- TOYOTA社
- JTB社
など企業様や団体に向けてデザイン思考に特化した研修を行っています。 IMAKEのデザイン研修の特徴は以下の通りです。
- 対話・実践重視:一方通行の講義ではなく、意見交換のディスカッションや実践形式のワークを多く取り入れることで学習効率・学習定着率を上げ、研修効果を最大限に高めます。
- 考え方を重視:ユーザー体験や課題解決の考え方を学び、デザイン思考の型を身につけます。
- 現場に合わせてカスタマイズ:職種・業種に応じて、必要な考えをレクチャーします。
- アフターフォロー:現場で実際に使えるように、研修後の相談やレビューも実施。
提供できる具体的な研修
また、IMAKEでは、上記の特徴に基づき、以下のような実践型研修も多数提供しています。
- ノンデザイナー向けの「伝わる資料作成研修」
- 営業職・マーケター向けの「顧客視点で考えるUI/UX入門」
- デザイナーやディレクター向けの「プロトタイプ設計研修」
- デザイン思考やプロトタイピングを用いた「新規事業開発ワークショップ」
など、いずれの研修も単なる知識提供ではなく、「実際に手を動かして学ぶ」ことを重視しています。
「自社の業務にどのように活かせるか」「自分の仕事のどこをデザインできるか」を第三者目線に立って気づくきっかけを提供します。ノンデザイナーであっても、デザイン思考を理解し活用することで、業務の成果は大きく変わります。
デザイン思考で考えを変えてみませんか?
デザイン思考は、これからのビジネスに不可欠な共通スキルです。今後のキャリアやチーム力を高めるためにも、まずはデザイン思考に触れてみませんか?
IMAKEでは、初めての方にも安心してご参加いただける体験型セッションをご用意しています。お気軽にお問い合わせください。